2015/10/18(日)

18:40 時雨


「クソ…嵌められたか…!」
「どうしましょう武蔵さん…!」
「…やはり「秘密」を知ってしまったから…口封じという訳か…清霜」
「何々?」
私は清霜の胸倉を掴むと、遠くへと投擲する。
「きゃああああああ!む、武蔵さん󾬅︎」
「…私は大丈夫だ。お前はどこか別の鎮守府へ行け。受け入れは義務だ。断れないはず」
「…でも、武蔵さんは!」
「言ったはずだ。「大丈夫だ」とな」
「…っ!」
「行け、駆逐艦清霜!我が装備、くれてやるまでくたばるな!」
清霜は振り返って真っ直ぐに海域を離脱する。
だが離脱せんとする清霜を、艦娘の弾丸が襲う。
「こんな弾1発ごときで…!」
砲弾を受け止め、そのまま駆逐艦へと投げとばす。
「いだっ!」
脳天に直撃したのか、そのまま後ろに倒れる。
「…どうした、私はここだ。…来いよ、スクラップにしてやる」


「…戦闘…終了…か」
意識が朦朧とする。あそこまで練度の高い駆逐艦がいるとは思わなかった。
…途中深海棲艦の攻撃も受け、左腕…肘から下が無くなっている。
戦いの最中だったからか気にならなかったがその事を確認すると、今更激痛が走る。
「あがっ、がぁああああ!」
思わず悲痛な叫びを上げてしまう。とてもじゃないが、我慢できる痛みじゃない。
「…あぁ、戦艦武蔵…ここまで…か。清霜…お前だけは…生き…」
「あー、いたいた。那珂ちゃん、こっちこっち」
「うわー、本当に武蔵さんだ!」
「…このまま死ねれば綺麗だったのに…貴様らのせいで台無しだ」
「そっか、じゃあそのまま沈めば良いんじゃないかな」
「時雨ちゃんストップストップ…とにかく、武蔵さん。貴方を助けに来たよ」
「…いや、このまま沈ませてくれ。…私が消えた方があの人も喜…ぶふぇっ!」
時雨と呼ばれていた小娘が私の腹を踏み付け木の板を水面に沈めるのと同じ行動をしている。
「人が折角助けに来たのになんだいその態度は。戦艦は間抜けしかいないのかい」
「時雨さん、お姉様の悪口は榛名が許しま」
「間抜けが言っても説得力ないよ。…しかし、このままだと沈むけど良いのかい?」
私は右手で時雨の足を退ける。
「沈んだらどうする!馬鹿者!」
「やっぱり戦艦は間抜けだらけだね。自分で死にたいと言ったんじゃないか。扶桑と山城を見習いなよ」
「本当になんなんだお前達は!」
「那珂ちゃんが説明しまーっす!艦隊のアイドルにしてセンター、軽巡洋艦…那珂ちゃんだよ!」
「勝手は榛名が許しません!戦艦、榛名󾬆︎」
「…軽巡洋艦、球磨だクマ」
「…え、これやらなきゃダメかい?…えーっと、駆逐艦、時雨だよ」
「航空母艦、龍鳳です♪」
「れっつぱーりぃっぽい!くちくかん、ゆうだち!」
「六人揃って!」
「「「「「「ご存知、李艦隊󾬆︎(っぽい!)」」」」」」
思わず唖然としてしまった。
なんだろうこの場違いな六人組は。
「なんだそのヒーローの名乗りみたいな物は!というかご存知ってなんだ!知らないぞお前らなんて!」
「君はと○ねるずの番組に対して「私達なにもしてないのになんで「皆さんのおかげでした」なの󾬅︎」って尋ねるのかい?…そんな事はどうでも良いんだ。…生きたい?」
「…何?」
「生きたいかどうか聞いてるんだ。はいかいいえで答えて」
「はい、だ。生きて、私はこの艤装を彼女に受け継がなければならんのだ…!」
「ならこの手を取って」
時雨の手を取ると、暖かさが目に浮かんだ。
そして私は、久々に微笑んだ。


「…榛名ぁ!」
「はいぃっ!な。なんでしょうお姉様…!」
「捨て犬を連れてきちゃNOっていっつも言ってるでショ!」
「ご、ごめんなさいぃ〜」
「待て金剛」
「提督!」
「この子は俺が救助命令を出したし…こいつは戦艦だ、犬じゃない」
「…へ?」
「全く、人を犬扱いとは…良い度胸じゃないか」
「…あのまま沈めても良かったんだよ?」
「うぉっ、し、時雨か…」
「紹介するよ金剛、彼女は戦艦武蔵。大和の妹だよ」
「…oh!youがあのヤマトのsisterデスね!」
「…いや、あ、あぁ。そうだ。私が武蔵だ」
「…お前が来たという事は…準備が出来たんだな」
「うん、わざわざチーh…じゃなくて工作艦を呼んだ甲斐があったよ」
「…何の話だ?」
「君の新しい腕だよ、要らないのかい?」
「…何故そこまでする、私が頼んだか?」
「提督の命令さ、提督自身の考えは僕もよく分からない。だって何考えてるか分かんないし…ね、提督?」
「…君を戦力としてカウント…と言うのは失礼か。君をこの艦隊に招き入れたい。旗艦は既に決まっているので変更できないが。それと…」
「?」
提督が溜めていたので、少々疑問に思う。
「君の釣れていた随伴艦、「清霜」だったか。彼女の捜索も手伝おう」
…若干死にかけたが、命も助けて貰い、新しい左手と「居場所」まで貰い、その上清霜捜索も手伝って貰える。こんな恩…忘れたくても忘れられる物か。
既に私の心は決していた。

「左手の調子はどうだ?」
「…まだ慣れないが…そのうち自然と動かせるだろう」
「…さあ、どうする。全ては君次第だ」
「この武蔵、提督に心より感謝する。この鎮守府に着任した暁には…鎮守府への貢献と、絶対なる勝利を約束しよう。では改めて…大和型戦艦…ニ番艦、武蔵󾬆︎参る󾬆︎」

こうして、あの変わり者スーパー船隊に配属となった。